生活不安や心の病、相談乗ります 自殺防止へ専門家ケア(asahi.comより)

 生活不安や心の病を抱える人の悩みを、法律やメンタルケアなどの複数の専門家らが一度に聞いて自殺防止を図る取り組みが、さいたま市で続いている。スタートから7カ月。利用者の数は予想以上で、事務局は「さまざまな分野の専門家が相談に乗ることで解決に導きたい」としている。

 「暮らしとこころの総合相談会」は、毎週木曜日午後3時から、JR大宮駅近くのJACK大宮5階フロアで開かれている。

 「誰も理解してくれない。自殺したい」。今月11日、20代の女性が相談に訪れると、精神保健福祉士の苅田尚晴さん(58)と、生活困窮者を支援するNPO法人「ほっとポット」の富松玲香さん(28)らが対応した。

 「困っていることを具体的に聞かせて下さいね」。苅田さんが優しく語りかけ、落ち着きのない女性をなだめた。

 話が進むうちに、女性は、適応障害という病気を抱え、生活保護を受けているが、生活費のやりくりに苦慮していることが分かった。

 富松さんは「生活保護を受けていれば、公共料金が安くなる制度がありますよ」とアドバイスした。相談は約1時間。女性は「困ったことがあったらまた来ます」と話し、表情を少し和らげた。

 富松さんは生活困窮者の支援には詳しいが、精神疾患についての専門知識は少ない。「心の悩みも抱える人にどう接すればいいのか、不安が多い。苅田さんが話をリードしてくれたので、適切なアドバイスができた」と話す。

 県警によると、昨年県内で自殺した人は1796人。理由は「健康問題」、「経済・生活問題」が上位だったが、二つが結びついて自殺に至る例が多いとされる。

 「総合相談会」はこうした傾向を踏まえ、「うつ」や「多重債務」といった原因別に分けずに悩みに対応する。4月から県の委託事業として始まった。多重債務者を支援する市民団体「夜明けの会」(桶川市)が事務局となり、弁護士や司法書士、社会福祉士、精神保健福祉士らが参加する。夜明けの会によると、毎週定期的に開かれる総合相談会は県内初という。

 4〜10月の延べ相談者数は491人。当初は毎月40人と見込んでいたが、ピークの9月には100人以上の相談があった。そのうち113人が「生活不安」と「こころの病」の両方を抱えていたことが分かった。夜明けの会の吉田豊樹さん(38)は「複合的な悩みを抱えても相談者本人が、それを自覚していない。様々な専門家が接すれば、より本質的な課題を見つけることができる」と話す。

 多重債務問題に10年以上取り組んでいる井口鈴子司法書士(64)は、借金が原因で自己嫌悪に陥り、借金問題を解決した後も周囲から孤立してしまう人を多く見てきた。「人間らしく生きるために、人生のあらゆる面をサポートする相談会にしたい」と話している。相談会の問い合わせは事務局(048・782・4675)へ。